キリンホールディングスとサントリーホールディングスによる経営統合交渉は8日、統合比率や新会社の経営のあり方に対する考え方が一致せず、表面化から半年余りで断念に追い込まれた。国内食品業界で1、2位の勝ち組同士が、世界で通用する国際ブランドという共通の夢をかけた交渉だったが、最後は株式上場企業キリンと創業一族が支配する非上場企業サントリーとの間の文化の溝を埋めることはできなかった。
8日午前、東京都内で行われた加藤壹康キリン社長、佐治信忠サントリー社長の会談は短時間で終了した。これまでの交渉で両社の統合比率についてキリン側はサントリー創業一族が株式の3分の1超を保有できるキリン1対サントリー0.7程度を主張。0.9を要求するサントリー側は、キリン側から大幅な譲歩を引き出すことに期待をつないだが、加藤社長から新提案はなく、「交渉を打ち切りたい」という最後通告で幕を閉じた模様だ。
キリンの加藤社長は同日午後、東京・丸の内の東京会館で記者会見に臨んだ。加藤社長は「統合後に株式公開会社になる新会社の経営の独立性、透明性確保への考えの違いが、交渉を続けても一致する見通しが立たなかった」と語った。
サントリーの株式の約9割を握る創業一族の資産管理会社、寿不動産。株主には同社社長を兼ねる佐治社長のほか、創業者の鳥井信治郎氏(故人)を頂点とする鳥井・佐治両家の関係者が名を連ねる。
事業収益を社会、顧客、従業員に還元するという理念「利益3分主義」を経営に生かし、文化事業や社会貢献事業に積極的に取り組めたのは、利益至上主義に傾きがちな市場とは一線を画した同族企業ならではという考えが基本にある。
加藤社長は経営統合後も寿不動産が合併、増資など重要案件への拒否権が発生する株式の3分の1超を保有することを「所与のことと考えていた」と述べたが「交渉を進めるうちに異なる要望や見解が出てきた」と明かした。おのおのの事業の評価を巡る対立もそのひとつだ。
サントリー側は交渉終盤でも「会社の限界を乗り越えてもらわないと。結婚は越えられない一線を越えていかないと」(首脳)と周辺に述べ、キリン側が最終的に歩み寄ってくることへの期待感を隠さなかったという。
しかしキリン側は統合比率を決める際の「意思決定の透明化」をあくまで求めた。「歩み寄りには論理的な説明が必要。株主に説明しなければならない」(交渉関係者)という、上場企業としては当たり前の判断だ。だが、同族企業のサントリー側からみると、経営トップ同士が意気投合して始まった交渉だから、最後は“トップの決断”で解決できると見ていた節がある。
[毎日新聞ニュース]より
日本企業が世界との競争力を付けるためには今回の統合は必要だったという話がありますが、ビジネスのことだけではかたづけられないものがあったということです。統合への話が出たときから、この両者の統合には厳しい壁があるということでしたから、統合前に破談になったことはある意味良かったかもしれません。
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